皆様こんにちは。最近チリチリとするほど暑いですね!住んでいる場所の熱中症警戒アラートが「極めて危険」(外出は控え、運動は中止)になる日もあり、おそろしくなります☀️💦
私の住んでいる場所の周りでは夏場によく小さなアマガエルを見かけます。しかしここまで暑いと毎年のことながら心配になってしまいますね。毎年、夏にベランダに棲み始めるカエルがおり可愛らしいのですが(室内からこぼれる明かりに餌になる羽虫が寄ってくるんでしょうね)、日中ベランダの床材は砂浜の砂かと思うほど暑くなるので、年によっては干からびてミイラになってしまったカエルを目撃することに…。というわけで、夏場の私はアマガエルを見かけると霧吹きで水を掛けて回っています🐸🚿
今回は、子供の時に読んで思い出に残っているムーミン・シリーズについて綴ってみました。私はキャラクターとしてのムーミンも好きなんですが、原作の小説も大好きで、確か小学3年生の時に第一作目の『小さなトロールと大きな洪水』で読書感想文を書いた記憶があります。8月は読書感想文の季節でもありますが、皆様はどういった本で読書感想文を書かれましたでしょうか📚
この文章は、私なりのムーミン・シリーズ案内というか、原作小説全体の概要とその魅力のかいつまんだ紹介、という感じです。原作小説を読んだことがない方も、原作小説のファンだという方も、お楽しみいただけたら嬉しいです。それでは、よろしくお願いいたします🗺
■目次■
はじめに〜あなたを作った児童文学はなんですか〜
この記事を書こうと思ったきっかけなのですが、少し前、Twitterで「#わたしを作った児童文学5冊」というハッシュタグを見かけました。そこでせっかくなので記憶を頼りに自分なりの5冊を選んでみたところ、5冊中2冊がムーミン・シリーズの小説という結果になりました。
ちなみにその時選んだ5冊は次の通りです。
(皆さんは「自分を作った児童文学」を5冊選ぶとしたら何を選びますか📚)
思えば、ムーミン童話は子供たちに向けた作品でありながらも、登場キャラクターの繊細な心の機微や、身勝手さや弱さ、孤独感などのネガティブな側面までも丁寧に描き出し、全てを語りきらない独特の余情感が残る作風に、小さい頃からどこか魅きつけられていました。考えると、文学を学ぶきっかけをくれたのもムーミン童話かもしれません(もしかしたら絵を描き続けたいと思ったのも作者トーベ・ヤンソンへの憧れとムーミン・シリーズのおかげなのかもしれません)。
今回は自分でも整理してみたかったのもあり、ムーミン童話の道案内的なものを書いてみました。原作小説はシリーズものなのでストーリーに前後の関係があるのですが、「この作品とこの作品は同時期の出来事かな?」とか「発行されたのは後だけれど内容的には前作より前の時期の話じゃないのかな」と思うようなことがあり、少し作品同士の関係性を整理してみました。また、初めて読んだ時からちょっと野暮かな…と思いながら疑問に思っていたことについても書いてみようと思います✍️
また、ムーミン・シリーズには日本語の公式サイトがあり、そちらでシリーズの変遷や登場キャラクターの説明やイラスト、作者トーベ・ヤンソンの絵をご覧いただけます。せっかくなのでそちらへのリンクも適宜記事の中で紹介させていただきたいと思います。
余談:『マリアンヌの夢』とモモちゃんシリーズでも記事を書いてみたいのですが、買ったのがかなり昔なので本が行方不明になってしまいました…いずれ入手し直すしかないかな😂
ムーミン・シリーズは、フィンランドの画家・小説家のトーベ・ヤンソンによって書かれた物語シリーズで、「ムーミントロール」というキャラクターを主人公にした小説から始まりました。架空のムーミン谷を舞台に、主人公のムーミントロールとその両親を中心にしたムーミン一家、そしてその仲間たちが、自然や隣人を相手に繰り広げる冒険と自己探求の物語(という説明で合ってると私は思う…!)です。
作者トーベ・ヤンソンの来歴と作品について、詳しくはムーミン公式サイトのこちらのページでご覧いただけます👇
▽ムーミン公式サイト - トーベ・ヤンソンについて
www.moomin.co.jp
ムーミン・シリーズは童話(原作小説)全9作品から始まり、絵本が全4作品、コミックス(英国の大衆紙「イブニング・ニュース」で連載された漫画、弟のラルス・ヤンソンと共作)が全73作品あり(うち21作品がトーベ・ヤンソンの絵によるもので、残りはラルス・ヤンソンの絵によるもの)、その他日本では三度アニメ化され、他にもパペットアニメーション化などもされています。
ムーミン・シリーズの歴史やムーミントロールのビジュアルの変化等は、公式サイトのこちらのページでご覧いただけます👇
▽ムーミン公式サイト - ムーミンの歴史
www.moomin.co.jp
ムーミンは最初、トーベさんがらくがきした怒った顔の生き物(当時はスノークという名前)としてこの世に姿を現しました。そして白い影のようなお化けの姿から「黒いムーミントロール」(身体が黒くて目が赤い!👀)へと変化し、トーベさんが絵のサインに添えた小さな生き物の姿を経て、『小さなトロールと大きな洪水』で物語の主人公としてデビューを果たします。
🌟初めてムーミンの初期の姿を見た時の衝撃👀
ここからは私の個人的な話ですが。
私は確か小学3年生で小説『小さなトロールと大きな洪水』を、ムーミン・シリーズへのファーストコンタクトとして最初に読みました。それまでムーミンというキャラクターの存在は知っているけれど詳しいことは知らず、平成のアニメ版ムーミンの絵の印象が強かった私にとって、この本の挿絵のムーミントロールの姿はかなり衝撃的でした…笑 『小さなトロールと大きな洪水』のムーミントロールは、鼻が現在の絵と違ってだいぶ細く、しかも鼻と口がきちんとわかれた位置にある、ちょっとテングザルのオスを思わせるような造形になっているんですよね。「えっ可愛くない…!」というのが当時の正直な感想でした🤣
よくムーミンはカバなんだと認識している方がいたりしますが、最初期の頃のムーミンはカバとは似ても似つかない生物の姿をしています(とはいえ勿論テングザルでもないです💦)。
それから主人公が「ムーミントロール」という名前であることも驚きでした。それまで「ムーミンは “ムーミン” という名前のキャラクターだ」と思っていた私にとって、「えっムーミンってトロールなの…?『ハリー・ポッター』シリーズで出てきたみたいな、絵本『三びきのがらがらどん』に出てきたみたいなトロールの仲間なの…?」という困惑が生まれました笑(調べてみたら、『三びきのがらがらどん』は同じく北欧の、ノルウェーの昔話みたいですね🐐🐐🐐)
最近では私は、ムーミントロールって一体何者なのか?というと、日本人的には「トトロ」に近いような感じなのかな?と思ったりします。お化けとも違うし、かといって妖精や妖怪かと言われるとちょっと違うし、ましてや動物でもないけれど、独自の世界をもってずっとそこに存在している者たち、みたいな感じです。いかがでしょうか🌲🌳
原作小説のシリーズ構成
それでは、ムーミン童話(原作小説)の各作品について紹介したいと思います。原作小説は発行年順に並べると次の通りです。基本的にストーリーはその一作の中で完結しますが、登場人物やエピソードの記憶などの内容は次の作品へと緩やかに続いていきます。
1.『小さなトロールと大きな洪水』1945年
2.『ムーミン谷の彗星』1946年
3.『たのしいムーミン一家』1948年
4.『ムーミンパパの思い出』1950年
…『たのしいムーミン一家』と『ムーミンパパの思い出』は物語中の時間的にはおそらく同時期?
5.『ムーミン谷の夏まつり』1954年
6.『ムーミン谷の冬』1957年
7.『ムーミン谷の仲間たち』1962年…短編集
8.『ムーミンパパ海へいく』1965年
9.『ムーミン谷の十一月』1970年
…『ムーミンパパ海へいく』と『ムーミン谷の十一月』は物語中の時間では同時期で、対になっている物語
🌟岸川による作品解説🖋
ここからは各作品について、大まかなストーリー(のつかみ?)と主要な登場キャラクター、 私が選ぶハイライトを綴っていきたいと思います。私が選ぶハイライトは、個人的に印象に残ったポイント・エピソードなどなので、物語上重要なポイントとは限りませんが、そこは悪しからず😅(各作品を読んだことがある方は、よかったら自分だったらハイライトはここかな〜と考えてみてください、同じだったら嬉しいですね👍)
第1作目『小さなトロールと大きな洪水』(1945年)
<ストーリー>
厳しい冬が来る前に、寒さを逃れて逃げ込める家を見つけるため、陽の光があふれる場所を求めて旅を続けるムーミンママとムーミントロールの親子。ムーミンパパはニョロニョロと一緒に家を出て姿を消してしまったけれど、もう待ってはいられません。彼らは自分たちの求める居場所を見つけることができるのでしょうか?
ムーミンママ、ムーミントロール、スニフが初登場します。
<登場キャラクター>
ムーミントロール
「ムーミントロール」はこの主人公個人を指す名前であり、同時にこの種族全体を指す名前でもあります。作者トーベ・ヤンソンによると、ムーミントロールの性格づけはシリーズ中の誰よりも曖昧なのだそうです。その分、シリーズ中で最も心の変化・成長が大きいキャラクターと言えるかもしれません。
▷ムーミントロール | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
ムーミンママ👜
トレードマークはハンドバッグ、原作小説中でエプロンをつけた姿で描かれるようになったのは、『ムーミン谷の冬』からのようです。ムーミン屋敷であたたかく迎えてくれるお母さん、というイメージが強いムーミンママですが、この作品では子供たちを守りながら消えた夫の手がかりをたぐって旅をする、たくましいイメージで描かれています(ちょっと怒りっぽかったりもします笑)。
(追記:先日『ムーミン谷の夏まつり』の冒頭に、エプロン姿のムーミンママの挿絵を見つけてヒエッとなりました笑 しかし『ムーミン谷の夏まつり』の他のカットでは、エプロンをつけていない姿でも描かれていますので、ムーミンママが常にエプロン姿で描かれるようになったのは『ムーミン谷の冬』(1957年)以降という感じみたいです。1954年にコミックスの連載が始まっているので、読者がキャラクターを見分けやすいようによりわかりやすいトレードマークが必要になったのかもしれません。)
▷ムーミンママ | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
ムーミンパパ🎩
物語序盤は失踪者の扱いになっているムーミンパパ。トレードマークのシルクハットは、『ムーミン谷の夏まつり』から描かれるようになったようです。ニョロニョロとの旅の詳細は、短編集『ムーミン谷の仲間たち』にて描かれます。
▷ムーミンパパ | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
スニフ
この作品が最初に描かれた時には「小さな生き物」という名前しかついていなかったスニフ。でもアニメ版だとムーミンの友人の誰よりも背が高かったりしますよね、シリーズ中で成長したのかな笑
▷スニフ | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
ニョロニョロ⚡️
意思疎通のできない謎の生き物、ニョロニョロ。彼らはいつも旅をして彷徨っています。何が彼らの目的なのか?それをムーミンパパは、短編集『ムーミン谷の仲間たち』の中で知ることになります。ムーミンがカバじゃないように、スニフがカンガルーじゃないように、ニョロニョロもエノキタケじゃないですよ(誰も言ってないだろ)。
▷ニョロニョロ | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
<私が選ぶハイライト> 全てがお菓子でできた庭🍬
子供の頃初めて読んだ時は、旅をするムーミントロール一行が途中で魔法使い?に招かれる、全てがお菓子でできた庭が印象的でした。アイスクリームでできた雪やねじり砂糖でできた緑の草、レモネードが流れる川や木になったキャンディやチョコレートの実…ちょうど映画『チャーリーとチョコレート工場』で登場した庭みたいな世界かもしれませんね。魔法使いは「ここに住むつもりならシュークリームの家を作ってあげよう」と言います(ちいかわの巨・シュークリーム的な絵になりそうですね🧁)。
第2作目『ムーミン谷の彗星』(1946年)
<ストーリー>
大雨が上がったある朝、ムーミン谷の全ての景色がどす黒く染まっていました。そしてこれは地球に彗星が接近していることが原因で、いずれ彗星は地球に衝突するのだという噂が流れます。いてもたってもいられなくなったムーミントロールとスニフは、真相を知るべくおさびし山の天文台へ向かいます。
作中では天体接近に伴う潮位の変動、日照り・干ばつ、蝗害なども描かれます。この物語でじゃこうねずみ、スナフキン、スノークとスノークのお嬢さん、ヘムレンさんが初登場します。
<新登場キャラクター>
じゃこうねずみ🐭
虚無主義の哲学者。彗星がぶつかって地球は滅びるのだという見解をムーミン一家にもたらし、幼いムーミントロールやスニフをビビらせます。しかしそんなのは哲学者にとってはなんでもないことですじゃ。
▷じゃこうねずみ | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
スナフキン⛺️
ムーミンキャラクターの中でも非常に人気が高いスナフキンは、この物語から登場します。彼は作中で「一ぴきのムムリク」として紹介されており、スウェーデン語での名前は「スヌスムムリク」です。「ムムリク」は英語の「guy」というような意味みたいです(OH YEAH, かぎタバコGUY!)。
▷スナフキン | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
スノーク👓
「スノーク」も種族の名前でもあるようです。「スノーク」はスウェーデン語で「いばり屋、うぬぼれ屋」みたいな意味のようです(OH YEAH, スノッブGUY!)。
▷スノーク | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
スノークのおじょうさん🌼
媒体によって呼び名が「スノークのおじょうさん」だったり「スノークの女の子」だったり「ノンノン」だったり「フローレン」だったりする女の子。前髪とアンクレットがトレードマークで、ムーミントロールのガールフレンドです。
▷スノークのおじょうさん | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
ヘムレンさん🔍
「へムル」が種族の名前で、「ヘムレン」という愛称をもつ異なるへムルがムーミン・シリーズには何人か登場します(ちなみに、単に種族名の「へムル」で呼ばれる人物もシリーズ中に複数おり、ちょっと混乱します笑)。代表的なのがこの作品に登場する切手コレクター(から次作では植物コレクターに転身する)ヘムレンさん、『ムーミン谷の冬』で登場するスポーツマンで陽気なヘムレンさん、『ムーミン谷の仲間たち』で登場する静寂を愛するヘムレンさん、などです。
▷ヘムレン | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
<私が選ぶハイライト> 学者の情熱🔭
この作品の中で私が今でも時々思い出すのは、おさびし山の天文学者とスニフが交わす会話です。天体望遠鏡で彗星の姿を覗かせてもらったスニフに、天文学者は「あの彗星は美しいだろう、毎日毎日いっそう大きく赤く美しく見えるようになるんだ!」と語りかけます。彗星が地球に衝突すると予測される時間を教えてもらったスニフは、「衝突したら地球はどうなりますか」と天文学者に尋ねます。それに対し天文学者は、「そんなことは考えたことがないが、その経過は記録しておく」と答えます。
私はこの会話を、大学で火山活動についての地学の講義を受けた際、セント・へレンズ山爆発と火山学者デイヴィッド・ジョンストンのエピソードが登場した時に思い出しました。火山学者デイヴィッド・ジョンストンは1980年にセント・へレンズ山の噴火を山頂の観測所から最初に報告し、 “Vancouver! Vancouver! This is it!”「バンクーバー!バンクーバー!ついに来た!」という無線を最後に火砕流にのみこまれて死亡しています。私のイメージの中で、火山学者デイヴィッド・ジョンストンとこの天文学者のイメージは一体になっています🎓
第3作目『たのしいムーミン一家』(1948年)
<ストーリー>
冬眠から目覚めたムーミントロール・スナフキン・スニフは、この春初めての登頂者になるべく海近くの山に向かいますが、その山頂で真っ黒なシルクハットを拾います。そのシルクハットには魔法の力があったため、次々に奇妙な事件が起こります…。
この作品のムーミン谷は災害などは起こらず比較的平和ですが、外の世界から魔法が持ち込まるという形で事件が起きていきます。今作で氷の魔物・モランが初登場します。ちなみにアニメ版でもお馴染みのスノーク、切手コレクターから植物学者に転向したヘムレンさん、じゃこうねずみが小説シリーズの中で登場するのは、この話が最後です。
<新登場キャラクター>
トフスランとビフスラン👫
奇妙な言葉をしゃべる小さな二人組。彼らがモランの宝物、「ルビーの王さま」を盗んだために一悶着起こります。なんでそういうことするの。
▷トフスランとビフスラン | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
モラン👻
氷の魔物「モラン」は種族なんでしょうか、それともたった一人の存在なんでしょうか。シリーズ中ではしばらくは怪物扱いなんですが、『ムーミン谷の冬』あたりから彼女(モランは女性のようです)の持つ孤独な側面が描かれるようになります。
▷モラン | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
飛行おに🪄
黒豹に乗って旅をする魔法使いです。彼も「ルビーの王さま」を探し求めています。
▷飛行おに | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
<私が選ぶハイライト> スナフキンの旅立ちと帰還の約束⛺️
この作品で初めて、スナフキンがムーミン谷を起点に旅に出ることになります。ちなみに物語の冒頭では、その直前の冬はスナフキンもムーミン屋敷で皆と一緒に冬眠している描写があります(冬の間中ずっと眠っていることが可能なのかスナフキン…)。前作でムーミン谷を訪れて屋敷に滞在するまでは、スナフキンは気ままにあちこちを移動してテントで暮らしていました。この物語から、秋にムーミン谷を出発して暖かい土地へ向けて旅に出て、春にまたムーミン谷に帰り夏を過ごし、また秋に谷を旅立つ、というサイクルが誕生したようです。そのサイクルが生まれたのは、ムーミン谷に彼の帰りを待つ、ムーミントロールという親友ができたからですね🤝
第4作目『ムーミンパパの思い出』(1950年)
<ストーリー>
ムーミンパパが自伝を執筆し、それを家族に読み聞かせます。執筆中の自伝と現在を行き来するストーリーです。捨て子だったムーミンパパは、孤児院を抜け出して発明家フレドリクソンに出会い、彼が作った船・海のオーケストラ号で仲間たちと一緒に海へと旅立ちます…。
この物語は書き上げた章ごとにムーミンパパが家族に読み聞かせ、それを受けて現在のムーミントロールやムーミンママ、スニフ、スナフキンが感想を述べたりするという形で進みます(スナフキンがまだムーミン谷にいるので、時間的には『たのしいムーミン一家』と同時期か少し前の設定でしょうか?)。
フレドリクソン、スニフの父ロッドユールと母ソースユール、スナフキンの父ヨクサルと母ミムラ夫人、ミムラねえさん、ちびのミイ(リトルミイ)が初登場します。ちなみにスニフが長編に登場するのはこの作品が最後ですが、彼は短編集『ムーミン谷の仲間たち』でその後一度だけ主人公として登場します。
<新登場キャラクター>
ミムラねえさん🎀
「ミムラ」も種族の名前のひとつです。この話では嘘をついて人をからかうのが大好きなやんちゃな女の子でしたが、リトルミイの面倒を見るようになってからは、ミイが暴言を吐いたら「そんなことを言うと天国へいけませんよ」と諭したりするようになりました。
▷ミムラねえさん | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
リトルミイ🧅
この物語のムーミンパパの回想中エピソードで誕生したリトルミイ。生まれた時からとても小さかった彼女ですが、最初の挿絵では虫眼鏡で拡大した姿になっています(どれだけ小さかったんだ…)。次作『ムーミン谷の夏まつり』で異父弟のスナフキンに出会いますが、その時も彼のポケットの中にすっぽりおさまってしまうくらいの大きさです。
▷リトルミイ | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
おばけ⛓
ムーミンパパたちが旅の末に移り住んだ場所に、夜な夜な現れるおばけです。ある晩、独り立ちした若き日のムーミンパパを驚かそうと現れたのですが、途中でくしゃみをしたのでムーミンパパに「風邪ですか」と心配されて興醒めしてしまいます🤧
▷おばけ | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
<私が選ぶハイライト> ふてくされるスナフキン🦈
この作品ではムーミンパパの自伝という形で、彼の旅の仲間であったスニフの父・ロッドユールとスナフキンの父・ヨクサルの若い頃の話が語られます。ヨクサルがスナフキンの母・ミムラ夫人に出会った頃のエピソードをムーミンパパが語って聞かせた時、スナフキンは話を中断させ、「パパは自分よりもミムラ夫人のことが好きだったの?」と尋ねます。そしてムーミンパパに「だってその頃君はまだ生まれていなかっただろう」と言われると、スナフキンはふてくされてしまいます。読んだ当時も今も、スナフキンはクールなキャラクターだというイメージがあるので、このエピソードは結構意外でした。それに自分よりも父に好かれていたのかと嫉妬している相手であるミムラ夫人は、自分の母親なわけですし。この後、スナフキンはムーミンパパから自伝でも登場するサメの歯をもらい、自分のベッドの上に飾ると言って機嫌を直します。ちょっと子供っぽくて可愛いですね笑🛏
ちなみに、このときミムラ夫人と同時にミムラねえさんが登場しており、おそらくミムラねえさんの方が年齢もムーミンパパたち一向には近い?ので、読んだ当時はヨクサルはミムラねえさんと仲良くなったのだとばかり思っていました。まさか登場時から子だくさんのミムラ夫人の方が相手だとは思わないじゃない…。この自伝のストーリーの中でリトルミイが誕生しており(父親が誰かは作中には描かれていません)、ミムラねえさん・リトルミイとスナフキンは異父姉弟ということになっています。
第5作目『ムーミン谷の夏まつり』(1954年)
<ストーリー>
夏至祭を控えたムーミン谷で、ムーミントロールは約束の春を過ぎても帰ってこないスナフキンを悲しく待っていました。寝苦しいほど暑いある晩、火山性地震からの火山噴火、そして洪水という災害が起こります(こうしてみるとムーミン谷は結構自然災害が多いです…)。ムーミン屋敷も水に沈んでしまい、ムーミン一家は偶然流れてきた劇場に避難します。しかし偶然の事故(というかエンマの意図というか)でムーミントロールとスノークのおじょうさんは一家とはぐれてしまい、残りの家族は彼らと再会するべく、わからないながらも劇を上演してみることに…。
ホムサ族、フィリフヨンカ族、という存在が初登場します(ミーサという人物も出てきますが、これも種族名のようです)。
<新登場キャラクター>
ホムサ
「ホムサ」は種族名で、ムーミン・シリーズにはヘムレンさんと同じように異なるホムサが何人か登場します。代表的なのは、この物語に登場する真面目すぎてどこかズレてるホムサ(『悪霊』のキリーロフがムーミン谷の人物だったらこんな感じかもしれませんね(?))、『ムーミン谷の仲間たち』で登場する自分の想像を本当のことだと思い込んでしまう小さなホムサの男の子、『ムーミン谷の十一月』に登場する「母」の存在を求めるホムサ・トフト少年です。
(完全に余談ですが、私が作ったアニメーション『オルゴールの中の天使』に出てくる緑の目の男の子のイメージの源泉は、このホムサ族かもしれません)
▷ホムサ | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
ミーサ
ホムサ族ほど多くは出てきませんが、「ミーサ」も種族の名前のようです。この物語に登場するミーサはネガティブで、何もかもが自分に辛くあたるんだ!と考えている女の子です。生真面目なホムサはそんなことはありえないということを彼女に説明して納得させようとするのですが、「だってそういう風に感じている」という彼女には完全に逆効果です笑 二人は論理で動こうとする人と感情で動く人という、好対照の性格づけなのかもしれません。
▷ミーサ | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
フィリフヨンカ🔔
「フィリフヨンカ」も種族名で、大抵は現状に何かしらの閉塞感を抱えており、何かの規則に縛られている人物として描かれています。この物語で登場するフィリフヨンカは、来てくれないことがわかっているおじとおばを、毎年夏至祭のパーティーに招待し、テーブルセットの前で泣いている女の子です。じゃあやらなきゃいいじゃない…!
▷フィリフヨンカ | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
エンマ🎪
劇場を守る、誇り高いねずみのおばあさんです。この話で登場するフィリフヨンカのおばです。
▷エンマ | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
森の子どもたち⛲️
毎日禁止事項だらけの公園にやってくる、森に住む24人の孤児たちです。スナフキンは次で語る出来事のおかげで、一躍彼らのヒーローになってしまいます。
▷森の子どもたち | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
<私が選ぶハイライト> スナフキンの、親譲りのパンクでアナーキーな側面が開花⚡️
スナフキンが好きな方には有名なエピソードかもしれませんが、この作品中で彼の父・ヨクサル譲りのアナーキーな側面(?)が開花する場面があります。スナフキンは自由を制限したり何かを禁止したりするものが大嫌いなのですが、その代表として立て札というものを嫌悪しています。そのため、彼は様々なことを禁止する立て札が設置されている公園に赴き、その公園番夫妻にニョロニョロをけしかけて感電させ、その隙に全ての立て札を引き抜いてしまいます。ヨクサルも何かを禁止されるのが嫌いなのですが、ヨクサルは禁止の表示があったらあえて自分は禁止されていることをする(例えば立ち入り禁止の表示がある場所にわざと入って昼寝をする等)、というようなスタンスなので、破壊行動に出る息子・スナフキンの方がより過激なキャラクターかもしれません笑
第6作目『ムーミン谷の冬』(1957年)
<ストーリー>
例年の通り、家族みんなで冬眠をしていたムーミントロールは、真冬の最中、一人だけ目を覚ましてしまいます。冬眠に戻れなくなってしまった彼は、今まで全く知らなかった「冬の世界」に身を投じていきます。
おしゃまさん(トゥーティッキ)、ご先祖さまが初登場します。
<新登場キャラクター>
トゥーティッキ🛠
作者トーベ・ヤンソンのパートナー、トゥーリッキ・ピエティラという人物がモデルとなっているキャラクターです。夏を懐かしむムーミントロールにそっけない態度で接したりしますが、氷の魔物モランに対して、夏の生き物であるムーミン族が持ち得ない見方を提供したりもします。
▷トゥーティッキ | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
ご先祖さま🖼
千年前のトロールの姿を保っているといわれるトロール族の一人です(生きた化石、みたいなことなのかな?)。ムーミントロールは自分も千年前はこんな風だったのだろうかと考えたりしますが、いや、千年前だったら君もムーミンパパもムーミンママもまだ存在しているまいよ。
▷ご先祖さま | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
氷姫❄️
大寒波が人格化されたようなキャラクター、という感じでしょうか。モランがおそらくは年中谷のどこかに存在しているのと異なり、氷姫は年に一度だけムーミン谷を訪れます。モランの冷たさが生物が抱えるおそろしい孤独感のようなものを表しているとすると、氷姫は冬の極寒の気候という、生物の力の及ばない純粋な自然の力を表しているのかもしれません。
▷氷姫 | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
<私が選ぶハイライト> ジャムで生きのびるとは…?🫐🍓
ムーミントロールだけが目を覚ましてしまったムーミン屋敷には、氷姫(大寒波?)の到来によって食べるものも無くなってしまったひとびとが、ムーミン屋敷にはジャム倉庫があるという噂を聞いて避難してきます。冬の間、ムーミントロールたちはムーミンママが貯蔵していたこけもものジャムといちごジャム、トゥーティッキが釣った魚のスープで生き延びているのですが、読んだ当時の私は、魚のスープはまだしもジャムで生きのびるとは…?と困惑しました。当時の私は(今も割とそうですが)、ジャムは調味料に分類されると思っており主食になるというイメージはありませんでした。その他、ムーミン・シリーズには温かいスグリのジュースなど、日本では馴染みがない料理がちょくちょく登場しますよね。ジャムも温かいフルーツジュース(フルーツシロップに近い?)も、冬の気候が厳しく雪に閉ざされてしまう地域では、新鮮な果物や野菜がとれない時期の大事なビタミン源なのだと思います。とはいえ私はムーミンたちのようにジャムを主食にするのは厳しいな!🤣
(2024年8月追記:この文章を書いた時点で、「ムーミンたちは妖精みたいな生き物だからジャムでも生きられる」、というようなファンシーなイメージが頭のどこかにあったのですが、単純に食糧がなければあるものを食べて生き延びるしかないじゃないか、というのが現実だというだけなのかも、と書いた後で思いました。ファンシーではなくシビアな描写でしたね…💦)
ところで、『ゴールデンカムイ』を読んだ時にフレップ(コケモモ)が登場し、あっこれがコケモモなのか!と思いました。ムーミン谷のひとびとはコケモモジャムよりもいちごジャムが好みのようです(コケモモ、と打ったら🫐という絵文字が出てきたのですが、ブルーベリーと打って出てくる絵文字と同じのようですね)。
第7作目『ムーミン谷の仲間たち』(1962年)
<ストーリー>
短編集で、作品ごとに主人公が異なります。
収録作品:
「春のしらべ」…主人公:スナフキン
「ぞっとする話」…主人公:小さい子供のホムサ
「この世のおわりにおびえるフィリフヨンカ」…主人公:フィリフヨンカ(初登場の人物)
「世界でいちばんさいごのりゅう」…主人公:ムーミントロール
「しずかなのがすきなヘムレンさん」…主人公:ヘムレンさん(初登場の人物)
「目に見えない子」…主人公:ムーミン一家と少女ニンニ
「ニョロニョロのひみつ」…主人公:ムーミンパパ
「スニフとセドリックのこと」…主人公:スニフ
「もみの木」…主人公:ムーミン一家
<新登場キャラクター>
ニンニ🎀(「目に見えない子」で登場)
自分をひきとったおばに日々ちくちくと嫌味を言われ、怯え続けてとうとう姿が見えなくなってしまった女の子です。積極的に、主体的に生きようとする活力は、まずは怒りから生まれるのでしょう。怒りを力に変え、大きな力を手に入れろ。それがシスの暗黒卿の教えだニンニ(?)。
▷ニンニ | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
はい虫🌲(「春のしらべ」「もみの木」で登場)
公式サイトの記事によると、「はい虫」という訳語があてられている語のうち、「クニット」が「もみの木」や前作『ムーミン谷の冬』で登場するサロメちゃんのようなヒト型の種族で、「クリュープ」が「春のしらべ」で登場するティーティ=ウーのような動物に近い姿の種族みたいです。動物に近い姿のはい虫はリスのような姿をしていますが、ムーミン・シリーズにはリスはリスで別に登場しているので、リスとは違う存在みたいですね🐿
▷クニット | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
<私が選ぶハイライト> 私の好きな話📖
この短編集の中で私が特に好きなのは、「春のしらべ」「この世のおわりにおびえるフィリフヨンカ」「世界でいちばんさいごのりゅう」「しずかなのがすきなヘムレンさん」です。どれも人と人とは完全に分かり合えない部分が残るけれど、それでも互いを尊重してそれぞれ自分らしく生きることはできる、ということを伝えてくれる物語だと思います。大人になってから読むと、好きでもないガフサ夫人と、お互い別に楽しくもないのに社交としてお茶会をするフィリフヨンカの姿は、妙にリアルです苦笑🫖
第8作目『ムーミンパパ海へいく』(1965年)
<ストーリー>
家庭生活に閉塞感を感じていたムーミンパパは、心機一転、海に浮かぶ孤島に家族揃って転居することを決意します。ムーミンパパはそこで灯台守の仕事をするつもりだったのですが、到着してみると灯台の灯りは消え、現任の灯台守の姿はありませんでした。灯台守はどこへ消えたのでしょうか?
<新登場キャラクター>
うみうま🦄
ムーミントロールはこの物語で、月光を浴びて海で跳ね回る美しいうみうまに恋をしてしまいます。それで「嵐の海で遭難したうみうまを自分が救助する空想」をしたりするんですが、その妄想の中には「危険な嵐の中で船を出す自分を心配する存在」としてスノークのおじょうさんが登場したりします(物語上で実際にスノークのおじょうさんが登場することはありません)。読んだ当時は、ムーミントロールって結構浮気なやつだな!と思いました笑(コミックス版だと逆にスノークのおじょうさんが激しく浮気性です🤣)。
一方うみうまたちは、ムーミントロールが自分たちに魅了されているのを知っていてクスクスとからかいます。ムーミントロールはうみうまたちから「ふとっちょのウニちゃん」と呼ばれたり「タマゴ茸ぼうや」と呼ばれたり、なんだか可愛いギャルに惚れてしまった内気な男の子、みたいな図になっています🥚
▷うみうま/はなうま | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
(8月28日追記:すいません、先日久々に『ムーミンパパ海へいく』を読んでみたところ、ムーミンの「うみうま救助の空想」に登場するのはスノークのおじょうさんではなくリトルミイでした…!間違えました😂
ちなみにムーミンって浮気なやつだな!というエピソードは、コミックス版の「恋するムーミン」で描かれています。登場人物の振る舞いが愛らしいし、結構な名言・迷言も多々登場するのでよろしければチェックしてみてください笑)
<私が選ぶハイライト> ムーミントロールとモランの心の交流🕯
ムーミン一家が屋敷で灯していたカンテラの明かりを追って、モランが島についてきてしまいます。ムーミントロールは夜、うみうまの姿を見にカンテラを持って浜辺に行ったところ、彼女にばったりでくわします。彼はモランがじっとカンテラの明かりを見つめているのに気づき、うみうまに再会するためと、モランにカンテラの明かりを見せてやるために、毎晩浜辺へ降りて行くようになります。このエピソードの帰着点で、私的にはムーミントロールの株が過去最高に爆上がりしました。個人的にはムーミン・シリーズにおけるベストエピソードかもしれません👍
最終作『ムーミン谷の十一月』(1970年)
<ストーリー>
ムーミン一家が孤島に向かった後、それを知らずに彼らに会いたくなったお客たちがムーミン屋敷を訪れます。自分が欲しいものや、解決したい問題のヒントをムーミン一家の存在に求めていた彼らは、ムーミン一家不在のムーミン屋敷で予定外の共同生活を送りながら、少しずついろいろなことを見つめ直していきます…。
<新登場キャラクター>
スクルッタおじさん🎣
公式サイトにいないのでちょっとキャラクターデザインを紹介できないんですが、挿絵の見た目からするとホムサ族とかミムラ族なんでしょうか。大変年をとった人物で、子供や孫が何人もいるようですが、皆の名前も忘れてしまっていてあれこれ世話を焼かれるのをうっとうしく思っています。ある日、彼は自分の名前すらも忘れてしまい、「スクルッタおじさん」という新しい名前を自分につけ、この世の親戚のことなど全て忘れてしまうべく、子供の頃小川で魚とりをした記憶があるムーミン谷に出かけることにします。
<私が選ぶハイライト> ホムサ・トフト少年の心情の変化と成長📚
私がこの物語で一番印象に残っているのは、優しくておおらかであたたかな、ある種「完璧な母」という存在をムーミンママの中に求めて谷へとやってきたホムサ・トフト少年の、心情の変化と成長です。トフト少年は実際にはムーミン一家と面識はないのですが、自分の頭の中に彼らの理想像を作り上げて信じています。そしてムーミン一家と親しい交流のあるミムラねえさんから、「ムーミンたちは腹が立ったりひとりになってせいせいしたい時は、ムーミン屋敷の裏の気味の悪い森を歩き回るんだ」という話を聞かされ、「ムーミンたちは怒ったりなんかしないんだ!」とキレたりします(無茶言うなよ…)。こうした、相手が自分の理想通りでいてくれることを求める・相手から受け取ることだけを求めるというスタンスから、自分は相手がつらい時には何ができるのだろうと考えるという姿勢に、次第にトフト少年の在り方は変わっていきます。これって当たり前のようで、大人になってもいとも簡単に忘れてしまいがちなことですよね。私はこのエピソードをいつも心の片隅に置いておきたいな、と思っております⚓️
🌟野暮なファンとしての疑問❓
ここからは、私が原作小説を読んだ当時から気になっていたこと・疑問に思っていたことについて書いてみたいと思います。児童文学でそんなことを追求するのは野暮だろ、というような話もあるかもしれませんが、結構同様の疑問を抱えている方は多いのではないか?とひそかに期待しております😅
ムーミン一家の家族の歴史の謎?
原作小説シリーズを続けて読んでいて、以前から「ムーミンパパ・ムーミンママより前のムーミン一家の歴史ってどうなってるんだ?」という疑問を持っています。
『ムーミン谷の冬』でムーミントロールのご先祖さまという存在が登場します。ムーミントロール個人のというより、ムーミントロール族の祖先の姿を保ったトロール族の一人(作中では千年前のムーミントロール族の姿、と言われています)という感じのキャラクターだと思います。だから人間で言うと化石人類が現代に生きている、みたいな感じでしょうか(千年前っていうと、現代の日本からすると平安時代にあたりますね)。
ムーミントロールはご先祖さまに出会ってから屋敷に帰って家族アルバムを開き、ムーミン一家の歴史に想いを馳せます。写真に写っている彼の先祖たちは、大抵は大ストーブかベランダの前ですましこんでいた、とあります。
ところで、なんですが。ムーミン屋敷は『小さなトロールと大きな洪水』でムーミンパパが建てたことになっています。また、ムーミンパパとムーミンママの馴れ初めが描かれる『ムーミンパパの思い出』では、ムーミンパパはフレドリクソンが造った船・海のオーケストラ号の操舵室を引き継いで海辺の岩の上に設置し、ムーミン屋敷のような形の家に仕上げて住んでいます(おそらくその家にいる頃にムーミントロールが生まれて、あろうことかムーミンパパは妻と子を置いてニョロニョロと旅に出てしまったのでしょう)。それから、ムーミンパパは赤ちゃんの頃にムーミン捨て子ホームに置き去りにされていた、と書かれており、彼は両親も親戚も不明となっています。となると家族アルバムに映っているムーミントロールの先祖は母方のみということになりますが、ムーミン屋敷が建ったのはムーミンパパ・ムーミンママの代からなのに、先祖たちは大ストーブかベランダの前で写真に写っているとは…?まあ、ムーミン族の伝統的な家の形はムーミン屋敷スタイルだそうなので、写真のご先祖たちもムーミン屋敷のように大ストーブとベランダがある別の屋敷(ムーミンママの実家とか…作中では登場しませんが💦)で写真を撮ったのかもしれませんね。
それからムーミン一家の家族史について若干混乱させるのが(?)、短編集『ムーミン谷の仲間たち』でムーミンパパがニョロニョロと旅をしていた期間の出来事が描かれる、「ニョロニョロのひみつ」です。この話の中で、ムーミンパパはいつも通りベランダでお茶を飲んでいたある日、ふらふらと海岸へ出かけていき、そのままニョロニョロの船に乗って旅に出てしまいます。このムーミンパパが出て行ってしまったベランダのある家は、時系列的にはおそらく『ムーミンパパの思い出』で登場する操舵室を改造した家なんでしょう。しかし、あれ、もしかしてこれはムーミン屋敷のことなのか?と混乱させる描写もあります。それは、どうやらその家の近くに「桟橋」と「ボート」があり、しかもなぜか当日のムーミンパパの行動を証言するキャラクターがヘムレンさんとスナフキンだということです。えっ、二人は『ムーミン谷の彗星』から登場したんじゃなかったっけ…?
もちろん、操舵室の家も海辺にあったので、ムーミン谷の屋敷と同じようにそこでも海岸に桟橋を作りボートを繋いでいたという可能性もあります。それにヘムレンさんは複数人いるので、もしかしたらこのヘムレンさんは『ムーミン谷の彗星』と『たのしいムーミン一家』に登場するヘムレンさんではない可能性もあります。しかしスナフキンはオンリー・ワンですよね。
ここから導かれる最悪の推論は、ムーミンパパはニョロニョロと一緒に2回も家出している(1回目は操舵室の家から、2回目はムーミン屋敷から)ということです。でも違うよね、そんなわけがないよね!?
その計算、まず前提から合ってないんじゃなかろうか📝
次に、自分でもこれは完全に野暮な疑問だという自覚があるのですが、『ムーミン谷の彗星』でムーミントロール一行が売店で買い物をする場面について、私は子供の頃から疑義を持っています笑
その売店で彼らは、スノークがノートを1冊、スニフがレモネードを1瓶、ムーミントロールが手鏡を一つ、スノークのおじょうさんがクリスマスツリーの星飾りを一つ購入するのですが、お金を払う段になって一行の中の誰もお金を持っていない、ということに気づきます(そういうのは先に確認しなきゃ…)。そこで彼らが気の毒になった店主のおばあさんは、スナフキンが売店で試着をしたけれど気に入らなくて返したズボンは8マルクの品なので、皆が購入する品全部より高価だから支払額は帳消しになる、と言います(本当は皆が買う品の合計の方が74ペニー高いのですが)。これを生真面目なスノークはノートに書き写して計算し、なるほど合ってるなあ、と納得します。「だけど74ペニー分足りないのはどうするの」とスニフが言いますが、スナフキンは「そのくらいの違いなら僕たちの計算では合ってるというんだ」と答えます(YEAH, This is スナフキン Style)。
この場面、小さい頃読んで当時ははっきりとは言えないけれど、「なんかおかしくないか…?」と思っていました。整理して考えると、スナフキンはズボンを試着しただけで購入はしてないから、そもそもズボンの所有権がスナフキンに移っていないはずですよね。だからズボンは初めから最後まで店主のおばあさんが権利を持っている品であり、ズボンもその他の品もどちらもおばあさんの店のものなのだから、物々交換として成立しないではないかということです。その上、このおばあさんはスニフが「彗星がぶつかるから一緒に洞窟に避難しないか」と誘うととても喜んで、彼らに棒キャンディーまでくれます。スニフの言い分だと、自分は彼らに74ペニー分借りがあるから、と言ってキャンディーをくれたそうなんですが、違いますよね。彼らの方が74ペニー分、おばあさんに借り(負債)がありますね(正確には8マルク74ペニー貸しにしてもらっているのに、棒キャンディーまで貰っちゃった訳です🍭)。
まあ、ムーミンの世界で所有権だの負債だのなんて言葉を出すなんて、野暮ですね!😅それにおばあさんはズボンの権利は自分が持っているのだから、自分が扱いたいように物事を処理しただけ、ということでしょうかね。小さい子供達がお金が払えず困っているなんて可哀想だったから、そのための方便ですね。
ムーミン屋敷の人の出入りについて
最後に、ムーミン・シリーズではムーミン屋敷に住んでいるキャラクターとその周辺に住んでいるキャラクターがいるんですが、ムーミン屋敷に住んでいるキャラクターがシリーズが進むにつれて特に説明なく移り変わるので、ちょっと混乱します。突然、どこからきたという説明もなく話の始めから住んでいるキャラクターもいますし、逆に何の説明も無いままいなくなってしまうキャラクターもいます。ちょっとムーミン屋敷の滞在者の変遷を追ってみました。
『小さなトロールと大きな洪水』1945年(ムーミン屋敷が初登場)
ムーミン屋敷家主:ムーミンパパ、ムーミンママ、ムーミントロール
滞在者:スニフ
『ムーミン谷の彗星』1946年
滞在者:
(物語スタート時点では)スニフ、じゃこうねずみ
(終了時点では)スナフキン、スノーク、スノークのおじょうさん、ヘムレンさん、子猫、が加わる
『たのしいムーミン一家』1948年
滞在者:
(物語スタート時点では)スニフ、スナフキン、スノーク、スノークのおじょうさん、じゃこうねずみ、ヘムレンさん
(途中から)トフスランとビフスラン、が加わる
☆子猫はどこ行ったん…?
『ムーミンパパの思い出』1950年
滞在者(現在パート):スニフ、スナフキン
『ムーミン谷の夏まつり』1954年
滞在者:
(物語スタート時点では)スノークのおじょうさん、ミムラねえさんとリトルミイ
(途中から)ホムサ、ミーサ、スナフキン、が加わる
☆ちなみに、この物語からはスニフとスノークが登場しません。スノークは独立したのでしょうか。スニフは独立したか、ご両親の元へ帰ったのでしょうか?
『ムーミン谷の冬』1957年
滞在者:
(物語スタート時点では)スノークのおじょうさん
(途中から)ご先祖さま、が加わる
☆ミムラねえさんとリトルミイは、ムーミン屋敷近所の別の場所で冬眠していました。
『ムーミン谷の仲間たち』1962年
(オムニバス形式で舞台もおそらく時期も異なるので除きます、久々にスニフが登場する話があります)
『ムーミンパパ海へいく』1965年
ムーミン屋敷家主:
(序盤で孤島に転居するけれど)ムーミンパパ、ムーミンママ、ムーミントロール、リトルミイ
☆この話で、リトルミイが正式にムーミン一家の養女になっています。
『ムーミン谷の十一月』1970年
ムーミン屋敷家主:ご先祖さま(ムーミン一家は孤島に転居して不在)
滞在者:スナフキン、ヘムレンさん、ホムサ・トフト、スクルッタおじさん、フィリフヨンカ、ミムラねえさん
こうしてみると、一時的なお客として来ていたキャラクターだけでなく、ムーミントロールの遊び仲間だったスニフやスノーク、スノークのおじょうさんも、途中で屋敷からいなくなってしまうんですよね。しかもどうしてか、という説明は作中には特にありません。まあ、独立して一人暮らしを始めたのかもしれないですよね、もしくは実家の方に帰ったか。漫画『コボちゃん』でもタバタ家に下宿していて途中で結婚して独立する「タケオおじさん」というキャラクターがいましたし、そういうのって現実でもありますね。
おわりに〜別の記事で『ムーミンパパ海へいく』と『ムーミン谷の十一月』について是非語ってみたい〜
私なりのムーミン谷の道案内でしたが、いかがでしたでしょうか。思いがけず、今までで最長の文章になったので自分でも驚いております。ムーミン谷って思ったよりかなり広いんだな…!👀
今回はムーミン童話全体の概要的な話になりましたが、私が「#わたしを作った児童文学5冊」に選んだ『ムーミンパパ海へいく』と『ムーミン谷の十一月』については、個別に記事を書きたいという思いがあります。そこでは、やはりマイ・ベスト・ムーミン・エピソードである「ムーミントロールとモランの心の交流~うみうまへの失恋をそえて~」と、「ムーミンママとホムサ・トフト少年それぞれの物語」について語ってみたいですね。
👇👇あなたもやってみませんか?
▽ムーミン公式サイト - ムーミンキャラクター診断
www.moomin.co.jp
ちなみに私は「スナフキン」になりました。なったんだから、仕方ない。怒らないで。
👇👇以前、飯能にあるムーミンバレーパークに行った際に撮った写真です。宮沢湖畔の半周をぐるっと回るようにスポットが配置されており、結構歩きます👟👟
www.instagram.com
それでは、長くなりましたがお付き合いありがとうございました。また次の記事でお会いしましょう!🙌
5月に見に行った薔薇を絵に描く練習をしてました。ムーミン・シリーズでもムーミンママが薔薇の花を育てていたり、コミックス版やアニメには薔薇を育てるのが好きな警察署長さんが出てきたり、シリーズと馴染みが深い植物ですよね。私はトーベ・ヤンソンが描く薔薇の絵が好きです🌹✨